日経新聞

製造業派遣の派遣料金が大幅に上がっている。無期雇用の正社員を多く抱える大手派遣会社を中心に、自動車や半導体関連など派遣先企業との料金交渉が1~2割上昇して妥結するケースが目立つ。

製造現場の人手不足は解消する手立てが見えない。派遣のニーズは高まる一方で、料金引き上げは派遣社員の待遇にも反映されてきた。

「九州から愛知への人の流れが止まった」。製造業派遣大手の幹部は言う。国内外の販売が好調な自動車業界ではトヨタ自動車の下請けメーカーが集まる愛知県だけでなく、九州でも派遣人材が逼迫してきた。

日産自動車グループで組み立てを手掛ける日産車体の福岡県苅田町の工場では、2016年10月から北米向け多目的スポーツ車(SUV)「アルマーダ」を増産し、高い稼働率が続く。2直体制から24時間稼働の3直体制に切り替えた。

日産車体の製造ラインは派遣従業員の比率が約20%。通常は自動車の工場は数%だ。稼働率が高まるラインの人手を派遣従業員で賄っている。自動車のほか電子部品や半導体でこうした動きが顕著になっている。

需給逼迫を受け、製造業派遣大手は派遣先との交渉で料金引き上げを受け入れられるケースが増えている。最大手のUTグループは17年度上半期(4~9月)に前年同期比10%程度上昇した。下半期も同程度の上昇になるもようだ。

同業のアウトソーシングの電子部品や自動車業界向けの1時間あたりの平均派遣料金は17年12月期で2400~2500円と前の期の2千円前後から上昇したようだ。nmsホールディングスは自動車や住宅資材、医療品関連の製造現場で上昇幅が大きいという。

派遣社員の引き合いに拍車をかけているのが有期雇用の期間工を巡る「2018年問題」だ。13年施行の改正労働契約法で、5年を超えて働いた非正規社員は18年4月から本人の希望に応じて無期雇用への転換を申し入れできるようになった。 無期雇用の製造工を自社で多く抱えると固定費が膨らむ。

このため派遣会社が無期雇用する派遣社員の活用に目を向ける企業が増えた。こうした背景から「派遣シフトが急速に進んでいる」(製造業派遣会社社長)。今後、工場が5年を前に契約を更新しない雇い止めが増える可能性もある。

料金上昇は派遣社員の処遇改善につながる。製造業求人情報サイトを運営するインターワークスの調査では17年11月の製造業平均時給(契約社員も含む)は1210円。13年11月から49カ月連続で前年同月を上回り、17年1月からは4%以上の時給上昇となった。

人手不足が続く中で「メーカーが自前で期間工を集めるのは難しくなってきた」(アウトソーシングの中本敦専務)と言う。料金上昇でも引き合いは増す見通しで大手は人員確保に動く。UTグループは四半期ごとに1千人の無期雇用の派遣社員を増員している。人手が不足するサービス業との人材の奪い合いも激しくなりそうだ。

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